第六話 前半 未来の子供たちのために

2021年7月6日公開

未来の子供たちのために

皆さん、今これを聞いて下さっている皆さん、古い地域は共同体であったわけだし、今後も共同体であろうとしています。
利他、互譲、共栄、助け合い、支え合いの共同体です。
そして、この不可分の要素にこの地域ではお寺と神社があります。
今、かなりの社会が共同体ではなくなっています。
戦後、旧村から大企業や中小企業に就職先が移りました。
そして、しばらくは会社や地方の公共の組織というものは、古い体質などと言われましたが、共同体であったと思います。
しかし、今、殆どの会社は共同体ではなくなりつつあります。
会社員が助け合って、支え合って、共栄するということはもはや幻想なのかもしれません。
資本主義社会に於ける株式会社の末端の社員の給料というものは、今や会社にとってはコストになってしまいました。
会社の利益を上げるためには、基本的には売上げを増やすか、コストを削除するかしかありません。給料とは今やコストなのです。
そして今、会社員に求められているのは、効率よく稼ぎ、会社に貢献し、給料が低く抑えられても、それ以上を求めないことなのです。資本家から見れば。

昔の会社

唐院はずっと唐院としてありました。私は1974年、昭和49年生まれなのですが、私が育ってきた70年代80年代90年代はまだ、一生懸命に勉強して、良い大学に入り、良い企業に就職すれば人生は安泰だと考えられていました。
そして良い大学に入り、大都会で青春時代を送り、大企業に入って仕事をするというのが、1つの明るい未来、今よりも豊かで都会的な未来を約束するものとして信じられていました。

私は、あまり言えませんが、経済学部出身なので株が好きで、ごく小さな遊びの一つとして、投資、株の売買をして楽しんできました。
しかし、いつの頃からか、2000年以降、それも2018年迄のここ最近では、日本の企業の株式を保有している株主の上位に、外資系の投資会社と思われる名前が目につくようになりました。
皆さん、会社とは誰のものか知っていますか。私が20代の頃、今から20年位前は、会社とは明らかに社員のものであり、会社とは社員達が仕事を通じて自己の夢、人生、生活を実現するための、それも一度入れば一生働き続けることのできる共同体である、思われていました。この頃はまだ、日本の大企業も株式の持ち合いの状況であり、要は日本の企業が相互に相手会社の株式を持ち合っており、終局的な所、日本の企業は日本人が持ち合っていて、外国の資本が大がかりに日本の会社を支配するということは余りなかったと思います。

現在の株式会社

先程の質問に戻りますが、法律上は、会社とは株主のものです。
つまり個人又は法人の資本家のものです。その株主が取締役を選びます。
そして、その取締役で取締役会を作ることになっており、取締役会の決議をもって代表取締役を選びます。
つまり、取締役とは、利益をあげるために有能な人物を、株主、つまり資本家、投資家、投資会社が選ぶ訳です。
つまり、取締役とは本来株主のために、利益を上げるために、株主が選ぶのであって、社員の内から人望のある者を人事部が選ぶということではありません。

これまでは、日本の企業同士が相互に株式を持ち合っていて、日本的な考えを反映した日本的企業として、日本の企業は2000年位迄は来たわけです。
だから日本の企業は、急激に業績が悪化した場合を除いて、日本的な共同体であり続けることができた訳です。私はその様に思います。

今、急激に日本の会社の株主は外資になっています。
ある証券会社の社員によれば、外国人投資家の割合は30%に達したとも言われています。実際にはもっとかもしれません。
ある特殊な会合で、大手の証券会社の社員に講師をして頂いたことがありました。
平成30年の日経平均が2万円を超えていた時であり、しかし、その時にあっても、証券会社の社員が、「いやーこんなに株価が上がっても、日本人はせっせと株を売っています。アドバイスと言われても、買っているのは外国人ばかりで、日本人は売っているんですよ。」と言っていました。
実質はどれ程迄日本の会社が外国の資本にある意味で支配されているのか分からない状況です。
そして、株式会社とはつまるところ資本家が配当金という形で、会社が稼いだ金を吸い上げるためのシステムでもあるわけです。
配当金は誰が決めるのか、皆さん、誰が決めると思いますか。
会社の財務部でも社長でもありません。
そのように見えても配当金を決めるのは、株主総会であり、要は会社を事実上支配している株主が決める訳です。
だから今や株式会社は、株主が株の売買益を上げるために株価を重視しろと言われ、配当金をより沢山得るために利益を上げろと言われ、そのために安い物を高く売り、従業員の給料を安く抑えることを目指す訳です。

子どもたちが生き抜いていくために

だから皆さん、皆さんの子供たちが一生懸命に勉強し、良い大学に入り、良い企業に就職できたとしても、もはやそれは、外国資本にある意味支配された大企業であったりする可能性があります。
外資系とはそういうことでもあるのです。
このままいけば。もはや、全てではないにしても、会社は、人生に於ける共同体ではないのではなかろうかと思います。
そして、子供たちの全部が大企業に就職できる訳ではありません。

だから、共同体が必要なんですよ。こんなに厳しい世の中を子どもたちが生き抜いて行くためにも、いつでも帰って来れる故郷、利他、互譲、共栄、助け合い、支え合いの共同体が必要なんですよ。
特に、我々末端の普通の日本人は、もう自らの足で立つしかない。
しかし、人は一人では立てないのです。
今も昔も。